2024/02/10 13:26

▶ この記事では...

お茶は湯冷ましして丁寧に淹れなければならない、と思い込んでしまっている方がたくさんおられます。
でも本当にそうなのでしょうか。この記事では熱湯で淹れても大丈夫というお話をお伝えします。

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▶ なぜ冷ますのか?

お茶を購入すると、「冷まして淹れましょう」と書いてあるものと、「熱湯で淹れましょう」と書いてあるもの、それぞれ見つけることができます。とくに価格帯が一定以上の煎茶、かぶせ茶、玉露は冷ますことが勧められているでしょう。一方で安い煎茶、焙じ茶、番茶、紅茶などは熱湯で、という指示書きがあると思います。

お茶を冷ますのは、低温でも抽出される成分=アミノ酸に的を絞った淹れ方です。アミノ酸は旨味やふくよかさのもとです。苦味や渋味を呈するカフェインやカテキンといった成分は低温では抽出されにくいので、湯冷まししてから淹れるお茶は茶の旨味をしっかりと感じられるのです。これを「出汁のよう」とか「甘いお茶」と感じる方も多いです。

一般的に価格の高いお茶、とくに緑茶ではアミノ酸の含有量が比較的高めです。とくに遮光栽培されるかぶせ茶や玉露はその傾向が特に強く、まずは低温でその旨味を楽しんでから、次第に温度を上げてそのほかの成分の味わいもともに楽しもう、というわけなのです。

▶ 熱湯で淹れるお茶は…

安価な緑茶、焙じ茶、番茶の場合には、一般的には原料に含まれるアミノ酸の量は少なく、味の厚みよりも淡白な飲みやすさが持ち味となります。こうしたお茶の場合はアミノ酸の量が期待されているわけではないので、はじめから高温でお茶を淹れ、香りを引き出して楽しむことが第一といえるでしょう。

多くの烏龍茶や紅茶も熱湯で淹れられる場合が多いのですが、こうしたお茶はアミノ酸が少ないからという訳ではなく、成分がじわじわとしかしみ出ない形状をしていることや、舌で感じる味だけでなく香り高さを本位としていることから、熱い湯で淹れるのも正攻法だとされるのです。

▶ でも、本当にその2つの考え方だけでよいのでしょうか?

当店では、だいたいのお茶を90℃以上の熱湯で淹れていますが、それにはちゃんと理由があります。香りを第一にしながらも、茶葉の量と蒸らす時間を調節することで、特定の成分だけを狙うのではなく、茶葉の全体像を味わえるように抽出したいからです。こうすることで私は、生産者がどのようなお茶を作ろうとして仕事と向き合っているのかをある程度推し量れるように考えています。

たとえば旨味を重視して作られている煎茶や玉露であっても、淹れ方次第では独特の風味を引き出し楽しむことができます。たとえば少量の玉露の茶葉を高温で長く蒸らし、青い香りをしっかり引き出しながらも重たくならないように淹れたりすることができます。

もしあなたが熱湯でいつもお茶淹れていて、でもそのことに少し後ろめたさ(丁寧にやっていない)という感覚を持っているとすれば、どうかそんなふうには思わずにこれからもお茶をお楽しみください。

▶ 一番大切なのは…

いろいろなお茶をみて自分の工夫を見つけることです。熱湯で淹れるのが正解ということなのではありません。いろいろな栽培や製茶方法を経て商品になっているお茶をたくさん試して、その中で自分なりにしっくりと来るやり方を見つけることが大切であり、そして楽しみでもあると考えます。

正解はありません。なぜかといえば、ひとつのお茶はどなたに対しても同じものでありながら、それに対する私達の受容感覚というものは千差万別だからです。失敗も含めて楽しみながら、お茶を生活にぐっと引き寄せて暮らしましょう🍵