2024/02/07 15:09
『茶の科学用語辞典』(日本茶業技術協会)で、カフェインは次のように定義されています。
「茶葉中に含まれる覚醒、利尿、興奮作用をもつプリンアルカロイドのひとつ。コーヒー等の嗜好飲料にも含まれる。大変昇華しやすく、しばしば保存中に結晶が析出することもある」
▶ カフェインが体にもたらす影響
中枢神経興奮・眠気防止・強心・利尿作用・代謝促進。
カフェインには即効性があります。多くは肝臓で代謝されておしっこになります。ごく小さな乳児は未熟なため代謝に時間がかかり、中毒のリスクが高くなります。そのため、新生児、乳児、妊婦、乳児に授乳中の母親、そして肝機能に障害をもつ方々は、摂取を控えめにすることがすすめられます。
急性中毒は、不眠・胃痛・吐き気・心拍数増加・頻尿が主です。摂取を止めれば改善します。
長期的な影響としては、肝機能が低下している人なら高血圧リスクの上昇、カルシウムが不足している人なら骨粗しょう症リスクの上昇(カフェインがカルシウムの体外排出を促進する)、または妊娠中の人なら胎児の発育を阻害する可能性があると言われています。
薬を使用している場合は、医師・薬剤師に相談することがすすめられています。
▶ カフェインの摂取量
内閣府食品安全委員会がまとめた各国のリスク管理機関の情報によれば、人によってカフェイン摂取の最大量は以下のように異なります。(日本の公的機関として独自にまとめた摂取量の上限はどうやらなさそうです)
・妊婦 200~300mg / 日
・子ども 2.5mg / 体重 / 日
(4~6歳)45mg / 日
(7~9歳)62.5mg / 日
(10~12歳)85mg / 日
・健康な成人 400mg / 日
※WHO、オーストリア保健・食品安全局、英国食品安全庁、カナダ保健省のデータに基づく
厚生労働省が日本食品標準成分表などからまとめた表が公開されているので、以下を参考にしてみましょう。
・カフェインを多く添加した清涼飲料水
32 ~300 mg/100 mL(製品によって、カフェイン濃度、内容量が異なる。)
・インスタントコーヒー(顆粒製品)
1杯当たり80 mg(2g使用した場合)
・コーヒー(浸出液) 60 mg/100 mL
浸出法:コーヒー粉末10 g、熱湯150 mL
・紅茶(浸出液) 30 mg/100 mL
浸出法:茶5 g、熱湯360 mL、1.5~4 分
・せん茶(浸出液) 20 mg/100 mL
浸出法:茶10 g、90℃430 mL、1 分
・ほうじ茶(浸出液) 20 mg/100 mL
浸出法:茶15 g、90℃650 mL、0.5 分
・ウーロン茶(浸出液) 20 mg/100 mL
浸出法:茶15 g、90℃650 mL、0.5 分
・玄米茶(浸出液) 10 mg/100 mL
浸出法:茶15 g、90℃650 mL、0.5 分
これを見る限り、お茶を急須で淹れて多少飲んだくらいでは、特段の事情がないかぎりすぐに摂取上限に達することはなさそうです。
次に、茶種別のざっくりとした傾向をお示ししておきます。参考になさってください。
玉露は、煎茶の1.5倍程度のカフェインを含むとお考えください。
「中間」のお茶には、大きな違いはありません。ただし、茶種によって標準的な淹れ方が違うのでご注意を。例えば紅茶は高温で長時間蒸らすことが多いため、1煎目に含まれるカフェイン量だけを考えれば他よりも多くなります。煎茶の場合、低温で淹れる場合はカフェインが溶出しにくい傾向にあります。
番茶・ほうじ茶・玄米茶に使用される茶葉は、カフェイン量が低い傾向にあります。ただし、ほうじ茶や玄米茶であっても、一番茶の若い芽を原料としたものがありますので、その場合はカフェイン量が少し多いとお考え下さい。一般的に価格の安いものならあまり気にする必要はないでしょう。
高温で短時間だけサっと淹れると、味わいはライトでも香りがのったお茶を作ることができます。お湯出しだけではなく、水道水を使って作る水出し茶もおすすめです。例えば茶葉10グラムに水1リットルをあわせて、冷蔵庫で一晩寝かせます。朝になれば茶葉を取り出して、そのまま冷蔵。水出し茶はカフェインが溶出しくく、苦みの少ないあっさりしたお茶が出来ます。なお冷茶は、一日で消費してください。
いずれにしても、カフェインに対して特に敏感な方、乳幼児、医師から指示を受けている方のほかは、カフェインに対して過敏になることはおすすめしません。お茶に含まれるカフェインは普通に摂取するぶんには健康上気にする程のものではありませんし、そもそもお茶が人々に愛好されてきたのは、カフェインがあったからに他ならないのです。
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